3 生体内タンパク質の蛍光イメージングに関する研究


近年,生体内分子の動的挙動を解明するためのバイオイメージング研究が盛んである。 これらのイメージングは標的分子又はタンパクに蛍光分子をラベル化することでその分子間相互作用や逐次変化の可視化が可能であり, 細胞内に存在するそれらを非破壊的に観測できる長所を有している。 現在, イメージング技術として, 緑色蛍光蛋白質 (GFP) に代表される各種蛍光タンパクや蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET) を利用した人工タンパクが開発されているほか, 合成低分子化合物を基盤とした新しい蛍光プローブの開発が精力的に行われ,様々な分野で用いられている。 これら蛍光プローブ開発で鍵となるのは, 観察したいタイミングでの蛍光出力のon-offスイッチ機能はもちろん, 標的分子との特異的相互作用 (共有, 非共有結合や接着など) であるが, いまだ確立された理論があるとは言えない今後の発展が期待される研究分野である。  我々は,新たに分子設計した機能性高分子に蛍光団を結合した蛍光プローブを作成した。 すなわちPNIPAAmにfluoresceinやdansyl骨格を導入し, LCST前後で蛍光強度が大きく変化する蛍光プローブの開発に成功した。 さらにこの蛍光性高分子末端にIgGや脂質を結合させることでBiohybridを作成し, RAW264細胞を用いた細胞内イメージングを行った。 現在さらなる, 高機能化を目指し, 種々の蛍光団や環境応答性高分子を用いた蛍光プローブの設計, 開発を行っている。


  1. H. Kobayashi et al., Dual Temperature- and ph-Responsive Fluorescence Molecular Probe for Cellular Imaging utilizing a PNIPAAm-Fluorescein Copolymer. Anal. Sci., 25, 1043-1047 (2009).