創薬物理化学講座の卒論や研究テーマなど、わかりやすくご紹介しています。
講義以外でなかなか関わりがないと思いますので、是非のぞいていってください。
「物化」のイメージが変わるかもしれませんよ。
どんな講座?
物理化学と聞くと過去の講義や試験を思い出して難しい気がするかも知れませんが、研究室では、新しい機能性高分子の開発と医薬品や生体成分の分離システムやDDSへの応用、ビタミンEやカテキンなどの食品機能性成分の新しい機能についてなどの研究テーマで、様々な分析装置を用いて実験を行います。動物実験はありません。
研究テーマ
1.機能性ナノ粒子を用いたDDSに関する研究
自分達で,新しいDDS製剤を作ってみませんか?? 当研究室では,様々な環境の変化(温度やpH)に応答するポリマーを開発し,それを用いて,医薬品の有効性や,患者のQOLを向上させる新しいDDSの開発を目指しています。これまで温度に応答するリポソーム製剤やナノ微粒子などを作製し,抗がん剤などの薬物放出制御や,細胞への取り込み制御などを可能にしました。新しい技術を使って,薬を創り,実用化を目指します。新鮮なアイディアで,新しいDDS製剤を作りませんか? |
2.病態細胞イメージングを目指した機能性蛍光プローブの研究/h4>
シグナル伝達や病気に関与するタンパク質の蛍光イメージング(画像化)の新手法を開発しています。標的タンパク質を特異的に認識する部位とその近傍の環境変化(温度,pH,光など)を蛍光シグナルへ変換する部位を有する機能性蛍光高分子を創出しています。これにより,細胞内の標的タンパク質がいつ,どこで,どのような状態で,どのくらい興味のあるアクションを起こしたかを視覚的に捉えることが可能となります。タンパク質間相互作用の解析といった基礎研究から病気の臨床診断への応用まで幅広い応用につながります。 |
3.機能性ポリマーを用いた新しい分離システムの研究
環境変化を自ら認識し応答するインテリジェントなポリマーを開発し,新しい分離システム “温度応答性クロマトグラフィー”の開発を行っています。この分析方法は,大量の有機溶剤を必要とする従来方法とは異なり,水のみを使用します。このため環境低負荷な(環境にやさしい)分析方法として,国内外から注目されています。これまでに,スウェーデンでの国際学会第1位受賞やアメリカ化学会学術誌の表紙に掲載されています。多くの特許も取得し一部は既に実用化され,市販されています。本講座のオリジナルな研究であり,環境省,文部科学省や科学技術振興機構の研究費のサポートを受けています。 |
4.医薬品の超高速分析法と個別化医療のための薬物代謝能測定研究
国内有数の大手機器メーカーと共同研究している超高速分離システムを用いて,麻酔薬のリアルタイムモニタリング,薬物相互作用解明と個別化医療のための多次元HPLC法など新しい分析方法について検討しています。例えば,超高速分離システムにより今まで60分近くかかっていた複数薬物と代謝物の同時分析が3分以内に行えるようになり,短時間で複雑なTDMを行うことも可能となります。LC-MS/MSを使った薬物動態測定や,薬物代謝酵素Cytchrome P450(CYP)を用いて代謝実験を行い,これまで不明であった薬物の代謝経路などの新しい情報が多数得られて論文になっています。 |
5.食品中抗酸化成分(Antioxidants)の生理活性機能発現に関する研究
活性酸素・フリーラジカルによる酸化的傷害が,がん,成人病,老化の原因となると言われています。生体の酸化防御因子としてビタミンEや食品中のポリフェノールに重点をおいて,生体内在性ラジカルによる酸化に対する抗酸化機構や食品成分の新機能について研究しています。抗酸化物質であるカテキン類の新しい機能,アルツハイマー病などの予防効果などについて検討しています。当研究室での研究から生まれた“新カテキン”という用語は, 2005年の新語として日経新聞やNHKでも取り上げられ,日本カテキン学会でも認められています。 |
卒論テーマ(内研)
職員、大学院生について、研究を行います。
配属決定後、各テーマについての詳しく解説した資料を渡します。
それを読んで好きなテーマを選ぶことができます。
2008年度の卒論テーマ
- 機能性高分子を用いた新しい分離システムについての研究
- 機能性高分子を用いた新規ドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究
- 環境応答性高分子を用いたインテリジェント化生体機能解析システムの開発
- 生体試料中の医薬品の選択的分離定量法と薬物代謝能測定についての研究
- 食品機能性成分及び生体中抗酸化物質の分析法の開発と機能についての研究
- 酸化ストレスに対するビタミンE異性体の併用効果の検討
大学院生研究テーマ
大学院生は活発に研究を行っています。
2007年度では、大学院生の学会発表は、国内学会32件、国際学会3件です。
機能性高分子を用いた新しい分離システムの開発
環境変化を自ら認識し応答する高分子を分子設計し、外部刺激に応答して試料との相互作用を変化させ分離選択性を制御するという全く新しい概念の分離システムの開発を目指している。これまでに温度応答性クロマトグラフィーを開発し、水のみの移動相で医薬品や生体高分子の分離を可能とした。現在カラムは市販され、本年度環境省の環境ナノテクプロジェクトにも採択された。新たにSPR(表面プラズモン共鳴)センサーや温度応答性マイクロチップの開発を行っている。
機能性高分子を用いた新規ドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究
抗癌剤などの医薬品の有効性向上や、DNA・ペプチドなどの生体高分子の医薬品化には、体内動態のコントロールが重要な課題の1つとなっている。医薬品を標的部位に送達させる制御システムの構築と、適切な薬物放出制御機構を備えていなければ選択的な薬理効果の向上は期待できない。これまでに、機能性高分子を膜融合性の脂質に修飾して温度応答性リポソームを作製し、抗癌剤の放出制御が可能であることを明らかにした。現在、さらに、温度やpHなどの外部環境変化を自ら認識し応答する高分子の薬物送達システムへの応用を検討している。
生体試料中の医薬品の選択的分離定量法の開発と薬物代謝能解析への応用
医薬品の適正な使用、重篤な副作用の防止のためには、血中薬物濃度の測定および薬物相互作用の解明は非常に重要な課題である。薬物相互作用には、特に肝代謝酵素であるチトクロムP450 (CYP)が関与しているものが多い。また現在、遺伝多型の解析が急速に進められていることから代謝能解析の重要性が示唆されている。LC/MSや光学活性検出器により生体中薬物の選択的高感度分離法を開発し、CYPを介した薬物相互作用及びキラル選択的な代謝の解析を行っている。
生体内在性ラジカルと抗酸化物質の相互作用の解析
生体内在性ラジカルと抗酸化物質であるビタミンEやPQQとの反応性を検討し、ESRを用いたラジカル中間体の捕捉やラジカル量の変化等の研究を通し、反応の全体像を明らかにする。また、最近報告されている抗酸化作用以外の新たな機能についても、他の抗酸化物質との比較検討する。
食品機能性成分の生体機能評価
現在サプリメントをはじめとする食品機能性成分が注目されている。高齢化社会における予防医学の推進とも相俟って、健康増進や疾病予防といった機能にも注目が集まりはじめ、次世代の代替医療としての期待も高まっている。これまで機能が明らかでなかったペットボトル飲料中のカテキン熱異性化体について抗酸化機能、薬物代謝酵素CYPへの影響や脳機能に対する効果について検討し、興味深い知見が得られている。日経新聞に掲載された。
以上のような研究テーマで、大学院生は活発に研究を行っています。
2006年度は、博士課程1年生が5月にシカゴで、12月に東京の国際学会で発表しました。
講座の研究風景
近日up予定です。